竹越院長コラムバイアグラ・レビトラ・シアリスのメカニズム

ED治療薬のメカニズム −バイアグラ・レビトラ・シアリス−

器質性(身体的要因)や心因性、あるいはこの両者が原因となるものまで、EDには多種多様な要因や症状があることは前述したが、この病気に悩む男性が多いにもかかわらず20世紀末まで内服薬は存在しなかった。

ED治療薬のメカニズム

しかし1997年、アメリカで初ののみ薬でのED治療薬が承認されることになる。翌1998年に発売に漕ぎ着けたこの薬は、「夢の薬」「画期的な新薬」として世界中の注目を浴びた。言わずと知れたバイアグラの登場である。

製薬会社ファイザーが生み出した、この画期的なED治療薬の開発の経緯には興味深いものがある。そもそもバイアグラ(これは商品名であり、薬の物質名はシルデナフィル)はED治療薬として開発されたのではなかった。1990年代前半に狭心症の治療薬として研究に着手されたバイアグラだったが、臨床試験での治療効果は思わしいものではなく、早々と試験の中止が決まった。ところが試験薬の返却を臨床試験の被験者に求めたところ、なぜか渋った。理由を問い質してみると「わずかではあるがペニスの勃起を促す」作用があると言うのだ。この作用が確認されたことで、狭心症の薬だったはずの新薬は、画期的なED治療薬として生まれ変わったのだ。発売と同時に世界の脚光を浴びたバイアグラは、アメリカで発売された翌年の1999年、製造承認が下りて日本に上陸することになった。のみ薬という簡便さ、そして何より絶大な効果によって、バイアグラの名前は全国に知れ渡った。現在でもED治療薬の代名詞的な薬なのである。

その後、2004年にはドイツの製薬会社バイエルがレビトラを、そして2007年にはアメリカの製薬会社イーライリリーがシアリスを発売し、現在、日本国内では3種類のED治療薬が処方されている。

これらED治療薬がなぜ勃起を促進するのか、そのメカニズムを説明しよう。ただ、その前に、男性の勃起がどのようにして起こるかについての説明が必要だろう。

男性が性的刺激を受けると、脳から神経を介してNO(一酸化窒素)が放出され、ペニスのなかでcGMP(環状グアノシン一リン酸)という血管を拡張させる物質が増える。そして血管が広がり海綿体に血液が流れ込みペニスが勃起するのだ。

ところが、いわば"血管拡張剤"であるcGMPが放出されたままだと、ずっと勃起したまま、つまり勃ちっぱなしの状態になってしまう。そこで射精など性的興奮が収まるとcGMPを壊すPDE5(ホスホジエステラーゼ5番)という酵素が放出され、広がった海綿体の血管が収縮し勃起が収まるのだ。

つまり、"血管拡張剤"の働きがあるcGMPによって血管が広がることでペニスは勃起し、cGMPを壊すPDE5によってペニスが萎えるというわけだ。例えるなら、海綿体に血液が流れ込む入り口の"シャッター"を開けるcGMPと、"シャッター"を閉じるPDE5のせめぎ合いによって、男性のペ二スは勃ったり萎えたりしているのである。

健康な男性なら"シャッター"の開閉がスムーズにいき、ペニスはきちんと勃起する。ところが、EDの男性は"血管拡張剤"であるcGMPが、加齢によって放出される量が少なくなったり、メンタル的原因で出づらくなったりするのだ。血管を広げて勃起を促すcGMPの量は減少しているのに、cGMPを壊すPDE5は相変わらず出続けているので、相対的にPDE5の量が多くなりペニスが勃起しなくなる。これがEDというわけだ。簡単に言えば、海綿体に血液が流れ込む入り口の"シャッター"があまり開かないか、閉じっ放しなので、当然、勃起は起こらない・・・・・・のがEDという症状なのだ。

ED治療薬はPDE5阻害薬と呼ばれているように、海綿体に血液が流れ込む入り口の"シャッター"を閉ざそうとするPDE5をブロックする薬だ。PDE5がブロックされれば、"シャッター"を開ける役割のcGMPの量が十分に増え、結果、海綿体の血管が広がり、勃起に至るという仕組みなのである。開発の経緯を見ると、偶然の産物だったとはいえ、実に理にかなった薬であると言えよう。