バイアグラに関するニュース女性版バイアグラ「アディ」の売れ行きが伸びない理由とは? 2015.11.18 wed

浜松町第一クリニック竹越昭彦院長監修

世界初、女性の性的欲求低下障害の治療薬として10月17日に販売開始した「アディ」ですが、11月6日までに処方されたのはわずかに227件(ブルームバーグ・インテリジェンス調べ)となっています。
発売初月に50万人が殺到し、センセーショナルなデビューを飾った男性向け性的不能治療薬「バイアグラ」とは、対照的な結果となりました。
アメリカ、ミネソタ州にあるメイヨー・クリニック内、ウーマンズ・ヘルス・クリニックのステファニー・フォビオン氏は「気軽な問い合わせが何件かあっただけで、処方はまだありません。女性が殺到すると予想していたのですが」と話しています。
「アディ」は、米食品医薬品局(FDA)に過去2回、承認を拒否されています。この拒否に対して、女性から「性的偏見が存在している」との避難が殺到したこともあり、8月18日、3回目にしてようやく認可を得たという経緯があります。
カナダの製薬会社バリアント・ファーマシューティカルズ・インターナショナルが、アディの承認直後に買収したスプラウト・ファーマシューティカルズの製品ですが、アディが市場に出て1ヶ月後のバリアントの株価は、ここ2年半で最低となる71.46ドルを記録しています。
同社は、他にもさまざまな問題を抱えているため、株価の下落はアディの影響のみとは言えませんが、アディの普及にはまだまだ多くの問題点があるようです。

アディが抱えるリスクとは?

「アディ」については、米国国内でも当初からさまざまな問題点が指摘されていました。

まずは、効果を感じる割合が極端に低いという事実です。臨床試験で効果があった患者数は偽薬のグループに比べて10%多いだけだったと公表されています。

男性器周辺の血流を良くし、性機能そのものに働きかけるバイアグラとは違い、アディは抗うつ剤と似たような働きで、ドーパミンやノルエピネフリンという神経伝達物質に働きかけます。女性の「性欲そのもの」、つまり「気分」に働きかけるため、効果が目に見えず、実感がわきにくいという部分もあるのかもしれません。

また、副作用も懸念されています。アディの使用には極度の低血圧、失神などのリスクがあり、FDAが2回、承認を見送った理由は「副作用の危険性から」とも言われています。

医師に研修が必要

FDAではこの副作用の危険性を考慮し、承認にあたり「特別な研修を受けた公認の医療専門家や薬局を通じてしか入手できない」という条件を付加しました。

この研修自体はインターネットを通じて10分程度で終了するのですが、最終的に書類をファックスする必要があるため、その手間をかける医師がまだまだ少ないという現状があるようです。

現在、資格を持つ医師は、アメリカの産科・婦人科の医師全体のわずか1パーセント、5600人にとどまっているようで、手続きをすべてインターネットで完結するようにするなど、制度の見直しが期待されています。

毎日の禁酒がネック

また、副作用をできるだけ回避するためには、アルコールを控えなければなりません。「アディ」は、バイアグラなど男性の治療薬とは違い、毎日服用する必要があります。そのため、治療薬を服用し続けるためには、「禁酒」が必要となり、これが、多くの女性を足踏みさせていると指摘する声もあがっています。

カリフォルニア大学のサンフランシスコ・メディカル・センターの産婦人科医、タミ・ローウェン氏は「1杯のワインを飲む自由くらい欲しいだろう」とコメントしています。

発売前、スプラウト社はこの事実をあまり大きく公表していませんでしたが、買収後のバリアント社によって情報を積極的に開示する方針へと変更されたようです。

対象女性が限られている

さらに、この治療薬は「性欲欲求低下障害の治療薬」で、主に更年期前の女性に効果を発揮するものとなっています。このため、原因が心理的要因、あるいはパートナーとの関係という場合には効果がありません。

処方対象となる女性が限定されるため「患者数が比較的少ない」と、オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターの産婦人科医、ジョナサン・シャファー氏はコメントしています。

高額な治療費

また、費用面にも問題があるようです。スプラウト社は薬価を公表していませんが、あるクリニックでは現在「アディ」1錠に26ドル(約3,200円)の価格をつけているようです。毎日服用しなければならないので、1カ月30日分だと780ドル前後(約9?10万円)となり、誰でも簡単に手を出せる、という金額ではないようです。

ただし、スプラウト社は過去に「1ヶ月20ドル(2500円)での服用プログラムを用意する予定」と発言したことがあり、今後は金額が下がる可能性もあるようです。

他にもアディを取り巻く問題が

アディの販売元、バリアント社では、既存の薬の値上がりや、売上の水増しを指摘されるなど、苦しい状況にあります。また、販売に際して当面は消費者に対する直接的な広告を行う事も禁止されていますが、スプラウト社にはアディの安全な使い方を説明できるマネージケアチームの担当が150人しかおらず、販売力が弱いことにも問題があるようです。

カナダ・ビクトリア大学の社会学者であるThea Cacchioni氏は、アディについて「大ヒットはしないだろう」という予想を持っています。同氏は「いつでも強い性的欲求を感じているべき、という考えはきわめて最近のものです。メディアで報道されるような、性的欲求が過剰な人たちを見るとプレッシャーを感じますが、実際のところ欲求は抽象的すぎて多い少ないを測れないものなのです」とコメントしています。

元記事:bloomberg.co.jp http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NXYS0Y6TTDS001.html
元記事:gigazine.net http://gigazine.net/news/20151119-female-libido-pill-viagra/