バイアグラに関するニュース「陰茎海綿体注射」の普及状況に見る日本のED治療事情 2018.07.20 fri

浜松町第一クリニック竹越昭彦院長監修

バイアグラ、レビトラ、シアリスという3つ治療薬の使用が中心だった日本のED治療において、新たな治療法が注目され始めました。それが、「陰茎海綿体注射」です。注目の一方でこの治療法を取り巻く状況を分析していくと、ED治療において世界的に大きく後れをとっている日本の問題が吹き彫りになっていきます。

こちらでは、陰茎海綿体の注射の概要やリスクについてお話しするとともに、日本におけるED治療事情についても深堀していきます。一般的な治療薬に変わる治療法をお探しの方や、国内ED治療に現状について気になっている方はぜひお読みください。

陰茎海綿体注射とは?

これまでED治療といえば、バイアグラ、レビトラ、シアリスなどの治療薬を服用する方法がスタンダードでした。事実、こうした治療薬によって多くの男性が勃起を体感しています。一方で、近年はこうした内服する治療薬とはまったく違った治療アプローチが台頭してきているようです。

それが、「陰茎海綿体注射」です。その名のとおり、この治療法では男性の勃起をつかさどる海綿体に直接注射をし、勃起を生じさせます。注目され始めたのはごく最近ですが、誕生は1980年代前半にさかのぼり、30年以上の歴史がある治療法です。

注入する薬剤については、時代とともに改良が加えられてきました。現在は、「PGE1(プロスタグランジンE1)」という薬剤が世界標準として使用されています。この薬剤は、1986年に東邦大学医学部の石井延久名誉教授が発表した「国産のED治療薬」です。

特筆すべきは、その効果です。上述した内服タイプのED治療薬で効果が見られなかった患者に陰茎海綿体注射を実施したところ、約8割に有効性が確認されたという報告があります。このことから、内服ED治療薬に次ぐ第二選択として採用されることが多いようです。

施術には、極細の針が搭載された注射器を使用します。このことから、痛みもほぼありません。シンプルなメカニズムと高い有効性、痛みの少なさから今後の普及が期待されているED治療法です。

陰茎海綿体注射の手順

陰茎海綿体注射の一般的な手順は以下のとおりです。

  • 1. 生理食塩水を使用し、薬剤を薄める。
  • 2. 注射器に薄めた薬剤を注入する。
  • 3. 陰茎を消毒する。
  • 4. 陰茎上部にあるふたつの海綿体の一方に注射器の針を刺し、薬剤を注入する。
  • 5. 注射部を消毒し、しばらく加圧する(1分程度)。

施術には、注射器、注射針、消毒用綿、注入する薬剤、生理食塩水が必要です。上述したとおり、注射針は非常に細いため、痛みを感じることはほとんどありません。

インターネットで必要なものを個人輸入する方法も?

インターネットでは、陰茎海綿体注射の薬剤を販売している海外サイトも見つかります。中には、薬剤、注射器が一体化した簡単に使用できるタイプも少なくありません。このことから、個人輸入で必要なものをそろえ、自身で陰茎海綿体注射を実施する方もいるようです。

一方で、医師をはじめとする専門家は個人での陰茎海綿体注射をしないように呼び掛けています。陰茎海綿体注射は施術によっては重大な副作用が起こり得る治療法です。安全のためには、医師の手によって実施されるか、初回の施術を医師の指導のもと行う必要があります。

また、上述した一体化タイプの注射は衛生上の問題点が指摘されています。インターネットで購入した薬剤は使用期限を超過していることも考えられるため、使用するのは危険です。インターネット通販において偽物が横行しているED治療薬と同様に、陰茎海綿体注射の薬剤、注射器についても通販で手に入れるのは控えるべきでしょう。

「持続勃起症」というリスク

高い効果が期待できる陰茎海綿体注射ですが、その一方で大きなリスクが指摘されています。それが、「持続勃起症」です。

持続勃起症とはその名のとおり勃起が長時間持続する状態です。4時間以上勃起が持続する状態を指します。EDに悩む方にとって「勃起力が持続する」という点では望ましい状態ですが、行為が終了してもまったく勃起が収まらないケースがあるようです。5,6時間が経過したころから、陰茎に痛みが生じ始めます。

持続勃起症のリスクは単なる痛みだけではありません。処置が遅れた場合は、海綿体の組織そのものが壊死してしまうケースがあります。このことから、施術後は適切な経過観察や必要に応じた措置が必要です。

また、この効果の強力さから、陰茎海綿体注射は自力での勃起が可能な方には推奨されていません。糖尿病と合併している場合、勃起神経に損傷が起きている場合など、重度の症状を抱えている方に施術を限定している医師もいます。一部のクリニックは性機能専門医がいない状態で陰茎海綿体注射を実施しており、大変危険です。

正式な治療薬として認可されるのはまだ先か

陰茎海綿体注射は日本でもED治療のスタンダードになっていくのでしょうか? 実際には、その道のりは険しいようです。

元来、日本はED医療においては世界的に大きく遅れていると考えられています。バイアグラ、レビトラ、シアリスの3種類のみが正式な治療薬として認可されている状況は先進国としては異例です。また、世界的なスタンダードなED治療法である「MUSE」、早漏防止薬に関しても日本では未認可のままです。

この状況は、陰茎海綿体注射に関しても例外ではありません。各先進国をはじめ80か国以上で認可されているPGE1は、日本ではED診断薬としての認可にとどまっています。治療薬としては、まだ正式に認可されていない状況です

近年の注目から、当初は陰茎海綿体注射が正式に認可される日も遠くないと考えられていました。状況を変えたのは、2018年4月に施行された臨床研究法です。認可のために膨大なデータを要求する同法の適応により、今後も認可は難しいという見方が主流です。

正式な認可が受けられない以上、自由診療での提供が多くなるでしょう。この場合、患者は費用面で不利益を被ることになります。適切に実施すれば問題なく、効果が大きいのにもかかわらず、一般的になりづらいということです。

臨床研究法は陰茎海綿体注射だけではなく、多くの有効なED治療法の認可を遠ざけると考えられています。「ED治療後進国」としての日本は、今後も世界に追いつけない状況が続くかもしれません。

国内ED治療の主流は内服薬

陰茎海綿体注射が治療薬として認可されていない現状や臨床研究法が施行されたことを鑑みると、今後も国内ED治療ではバイアグラ、シアリス、レビトラといったED治療薬が中心になると考えられるでしょう。インターネット通販において横行している偽物の販売が懸念視されていますが、信頼できるクリニックで処方されたものであれば問題はありません。副作用に関しても、適切に使用すれば陰茎海綿体注射の持続勃起症ほど危険なケースはないでしょう。

一方で、上述したED治療薬が効かなかった場合も選択肢が残されているという点は、EDに悩む方にとって大きな心の支えになるかもしれません。現在のところ自由診療になるケースが多いようですが、治療薬で期待していた効果が得られない方は陰茎海綿体注射を実施している医院を探してみてはいかがでしょうか。

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ごく軽い症状から重度の例まで、EDの患者数は増加の一途をたどっています。安全、かつ確実性の高い治療法が求められている状況です。陰茎海綿体注射は、多くのEDに悩む男性を救うかもしれません。

それだけに、陰茎海綿体注射をはじめ有効性の高いED治療法の認可が遅れている日本の状況は、多くの男性にとって好ましくないかもしれません。現状は、やはりバイアグラなど一般的なED治療薬が治療の第一選択となるでしょう。もちろん、国内ED治療の状況が進歩する可能性も否定できませんので、今後も新しい治療法には注目していきましょう。

元記事: @niftyニュース https://news.nifty.com/article/item/neta/12176-059583/