漢方精力剤とED【勃起不全】

浜松町第一クリニック 竹越昭彦院長 監修

精力剤には、医薬品やサプリメントの他に、古くから使われている漢方成分があります。漢方成分にはマムシやスッポンなどの動物由来の成分と、高麗人参などのように植物由来の成分があります。使用されている部位によって効果がまったく異なるのが特徴です。日本の法律の分類では、医薬品や食品しかないため、漢方成分も必ず医薬品か食品に分類されます。同じ動物や植物でも部位によって含まれている有効成分が異なるため、葉や茎は、食品成分でも、根の部分は医薬品に該当するなど扱いも効果も大きく異なりますので、使用する場合には、部位を十分に確認する必要があります。


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滋養強壮や疲労回復など「精力」に効果がある第2類医薬品に分類されている漢方成分には、インヨウカク、ジオウエキス(1日量0.8g以上)、シベットエキス、ジャコウなどが知られています。疲れが溜まっている、元気がでない、風邪を引いた時などの栄養補給に効果が期待でき、これらの成分が含まれたドリンク剤や錠剤などが医薬品として、厚生労働省に認可されています。

参照第2類医薬品に分類される成分表PDF(厚生労働省・平成27年)

比較的副作用のリスクが低い漢方として第3類医薬品に指定されている成分もあります。代表的なものには、ゴオウ、ニンジン(オタネニンジン)、ロクジョウなどがあります。こちらも第2類医薬品同様に、滋養強壮や体が疲れた時の栄養補給に効果が期待できます。

参照第3類医薬品に分類される成分表PDF(厚生労働省・平成27年)

マムシは全長50cm程度の夜行性の毒ヘビです。中国では昔から滋養強壮や精力増強を目的した漢方として広く利用されてきました。特にマムシの”胆のう”を乾燥させて粉末化した「蛇胆(じゃたん)」や、内臓と皮を取り除き乾燥、粉末化させた「反鼻」などが有名です。

マムシに含まれる成分としては、必須アミノ酸やカルシウム、各種ビタミンといったものがあげられます。また、血流改善・血液低下に良いとされるペプチドや、コレステロール値を下げるリノール酸なども含有していることが認められます。

マムシの勃起不全(ED)改善効果や性欲の増進作用

人を対象とした研究で、マムシの摂取によってEDが改善したとする信頼できるものはありません。また、性欲に関しても、直接性欲をあげる成分は含まれていませんが、アミノ酸やビタミンなどが含まれているため、疲労によって低下している性欲を回復する効果は期待出来るかもしれません。

スッポンは主に南アメリカ以外の熱帯地域に生息する、比較的甲羅が柔らかいというのが特徴の水生のカメの一種です。中国においては3000年以上も前から甲羅や頭、肉、血液などが薬として利用されてきました。また、現在ではスッポンエキスといった抽出物が顆粒、錠剤、栄養ドリンクなどとして利用されています。

スッポンには良質なタンパク質が含まれています。男性の精子がタンパク質によって作られるということもあり、精力増強の効果があると言われています。また、コレステロールを下げるリノール酸や、カルシウム、ビタミン、ミネラルなどが含まれていることも分かっています。

スッポンの勃起不全(ED)改善効果や性欲の増進作用

スッポンは昔から「精がつく食べもの」として扱われてきました。ただしこれには科学的な根拠はなく、伝統医学的な位置づけであると言えます。他の精力剤と同様、良質なタンパク質やアミノ酸の摂取によって、疲労の回復効果は期待できそうですが、直接的な性欲増強効果はないでしょう。

高麗ニンジンはウコギ科の多年草で、東洋においては2000年以上も前から滋養強壮剤として利用されてきました。漢方ではもっとも有名ではないでしょうか。成分の中で特徴的なのはジンセノサイドと呼ばれるサポニンの一種で、肉体的・精神的疲労回復を促すと言われています。

高麗ニンジンの勃起不全(ED)改善効果や性欲の増進作用

臨床試験で、主に50歳台へ1日900mg~3g、8週間~12週間の高麗人参の摂取によって、EDの症状(IIEF)に改善が見られたとの報告があります。多くは、高麗人参の産地である韓国での研究結果となっています。

参考 PMID: 12394711(韓国), 16855773(ブラジル), 19234482(韓国), 23254461(韓国)
※ PMIDとは、Pub Med の文献 ID です。
PubMed: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed

ムイラプアマはボロボロノキ科の樹木で、主に南米アマゾンからブラジル北部に野生しています。古くから”強精剤”として現地の人々などに利用されておりました。根の部分には、ヨヒンビンと同じような働きをする特有のアルカロイドが含まれているとされていますが、その研究は十分ではありません。

日本では、植物の根の部分は、医薬品成分に分類され、それ以外の部分は、食品に分類されています。日本国内では、サプリメントや漢方などで、主に樹皮が利用されています。

ムイラプアマの勃起不全(ED)改善効果や性欲の増進作用

ムイラブアマを使った研究にはさまざまなものがあります。その中には勃起不全に対しての効果を調べたものがありますが、どれも古い研究で、その効果については再度検討される必要があります。イギリスやアメリカなどでは、ED治療効果のあるハーブとして認められてきましたが、バイアグラをはじめとするED治療薬の、その驚くべき効果と安全性から、今ではすっかり影を潜めてしまいました。

参考 British Herbal Pharmacopoeia. "Muira puama."West York England: British Herbal Medicine Association,1983;132-33.

中国漢方の考え方のひとつに、「弱い部分を治すためには動物の同じ部分を食べる」というものがあります。つまり、精力が衰えている場合には動物のペニス(睾丸)を食せば改善が期待できる、ということです。また、オットセイの場合、オスは数十頭のメスを従えて行動することから、その精力にあやかろうというのが、オットセイの睾丸を漢方に利用する理由となっています。

オットセイの睾丸は、ホルモン物質を含むため、睾丸と陰茎部分は医薬品成分に分類されています。骨格筋からの抽出物は、ホルモン物質を含まず、タンパク源として食品原料となっています。

オットセイの勃起不全(ED)改善効果や性欲の増進作用

前述した通り、睾丸にはホルモン物質が含まれますので、医薬品成分となっています。また骨格筋の抽出物は、タンパク源となります。「体調を整えることで下半身に元気が戻る」といったものなので、栄養分やホルモン物質を含んだ動物の睾丸を摂取することが、最終的に精力増進につながると考えられています。

コブラはコブラ科のヘビで、南極以外の全大陸に生息していると言われています。また、ウミヘビ類などもコブラの亜種です。中国漢方では毒性が強ければ強いほど、強壮効果も高まると考えられています。コブラは強い神経毒を持つことから、その効果が期待されているというわけです。そのため、中国ではもちろんのこと、東南アジアでは栄養価が高く精力増強効果もある健康食品として捉えられています。

成分としては、コブラ特有のスペルミンという成分が含まれているようです。それ以外にも、多くのタンパク質や必須アミノ酸、亜鉛をはじめとする微量ミネラルなどの含有が認められます。

コブラの勃起不全(ED)改善効果や性欲の増進作用

マムシ同様、コブラにも精力増進の即効性は認められていません。また、科学的な根拠にも乏しいと言えます。そのため、摂取することにより体調を整え、体全体に活気を取り戻すといった効果に期待がされるようです。

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