糖尿病3大合併症とED ~糖尿病性神経症~

浜松町第一クリニック 竹越昭彦院長 監修

神経は、脳から脊髄を通って、体の隅々まで枝分かれしています。高血糖が原因で悪くなるのは、この枝分かれした先端の『末梢神経』です。末梢神経には、『感覚神経』、『運動神経』と『自律神経』の3つがあります。血液中のブドウ糖の濃度が高くなることでソルビトールという物質がこれらの神経内に蓄積し、神経線維に異常を生じて体に様々な不調が起こる症状です。また、血糖値が高い状態が続くことで毛細血管の血流が悪くなり、神経細胞が必要としている酸素や栄養が行き渡りにくくなることも原因のひとつだとされています。左右対称に足の方から症状が現れるのが特徴です。

症状から多発性神経障害、自律性神経障害、単神経障害3つに分けることができます。

多発性神経障害

糖尿病性神経障害の中で最も多いのが多発性神経障害です。手先や足先が痺れたり、足の裏の感覚が鈍くなったりするなどの症状が表れます。特に足先に症状が出やすく、両方の足の同じ部分に症状が出るのが特徴です。
足の感覚が鈍っているために、怪我や火傷をしているのに気が付かず悪化させ、壊疽に進行させてしまうことがあり、壊疽部分の切断を余儀なくされることがあります。しかし、足病変から発生する切断の多くはフットケアにより予防が可能だと言われています。常にウオノメやタコ、水虫、また靴ずれがないか、足が変形していないかに注意を払い、健康な状態に足を保つことが重要です。

自律性神経障害

自律性神経障害では1週間以上続く下痢や便秘、不整脈、発汗異常、勃起障害(ED)など広範囲な症状が表れます。自律神経は本人がそれと意識しない状態で体内の臓器の調整を行っているので、自律性神経障害によって引き起こされる様々な症状は本人が糖尿病の合併症だと気が付かない場合が多くあります。

また、自律神経に障害が発生した方の場合、前触れもなく急な低血糖を起こす場合があります。低血糖は判断力低下や眠気、意識障害を引き起こします。低血糖に陥った際に、回りに誰もおらず何も対処できないまま更に低血糖が進むと、けいれん、昏睡などに陥り、命に関わる危険な状態になります。このような不測の事態に備えて、糖尿病携帯カードを持参するようにし、周りの人にすぐにブドウ糖やジュースなどで対処してもらえるようにしておくことが大切です。

単神経障害

単神経障害では眼の動きをつかさどる神経が障害を起こし、物が二重に見える複視や顔面神経麻痺などの症状が表れます。しかし、単神経障害の場合ほとんどが数か月~数年程度で自然に治癒します。血糖値コントロールや良好な生活習慣をしていくことが重要です。

糖尿病性神経障害の治療の基本は血糖コントロールです。薬物療法ではアルドース還元酵素阻害剤がよく用いられます。症状が重篤な場合には痛みにより不眠やうつ状態になる場合もあり、鎮痛薬や抗うつ薬を用いて対症療法を行います。症状が進んでからの治療は困難なので初期の段階で適切な治療を受けることが重要です。

勃起をするには、目で見たり、触られる感覚などの性的刺激が神経を通して脳へ伝わり、さらにその刺激が陰茎に伝わる必要があります。陰茎も末梢部ですので、この神経が高血糖によって傷つけられていると十分刺激が伝わらなくなり、完全EDなど重度の勃起不全となることが考えられます。

軽度の神経障害の場合には、バイアグラなどの PDE5 阻害薬により血流を増加させることで、EDの改善効果が多くでみられ非常に有効です。
しかし重度に神経が傷ついている場合などでは、バイアグラなどの PDE5 阻害薬の血管拡張作用が出にくい場合があります。
ED薬で十分な効果が表れない場合には、陰茎に注射する ICI 療法を行うことになります。

性的刺激で、性器に少しでも反応がある場合には、まずはED治療内服薬を試してみるといいでしょう!

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