バイアグラは危険な薬という誤解

「バイアグラで死亡事故があったらしい」
「お酒と一緒に使うと危険らしい」
「バイアグラは心臓に悪い」
といった噂は、いまも根強く残っています。しかし、こうした誤解が広まったのは、ある“ひとつの事件”がきっかけでした。時期は今から20年以上前――1998年7月、日本で発売される前のことです。

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知人からバイアグラをもらい1錠服用したという60代の男性が、その後の性行為中に倒れてしまったのです。異変に気付いた家族が救急に連絡したのですが、救急隊が到着したときにはすでに心肺停止状態。医療機関にて心肺蘇生を試みるも、残念ながらその男性は帰らぬ人となってしまいました。
参考 ⇒ バイアグラ使用後に死亡した症例｜厚生労働省

その後の調査で判明したのは、男性は高血圧・糖尿病を抱えており、さらに不整脈治療のためのニトログリセリンを併用していたという事実でした。ED治療薬は多くの薬と併用できますが、ニトログリセリンだけは絶対に併用してはいけない薬です。併用禁忌にあたるため、重大な事故につながる可能性があります。

もちろん、医師が処方する場合はこうした禁忌薬について丁寧に説明します。しかし、この男性は「知人からもらった薬」を服用しており、医療者からの説明を受けないまま軽い気持ちで服用してしまったと考えられています。正しい知識がない状態での服用が、非常に悲しい結果につながってしまいました。

その後も、同じようにニトログリセリン系薬との併用によって事故が起こったケースが報告されています。専門医からすれば、これは明確な禁忌行為であり、危険性は十分に説明されてきた事項です。

しかし当時の報道では、禁忌薬との併用という“最も重要な要因”が十分に説明されず、 “バイアグラを飲んだ人が亡くなった”という事実だけが大きく取り上げられました。その結果、「バイアグラ＝危険な薬」「心臓に悪い薬」という誤解が社会に広まってしまったのです。

当院で2019年11月に全国の20～79歳の男性2,000人を対象に行った調査でも、「バイアグラは心臓に害がありそう」と回答した人が52％にも上りました。

参照 ⇒ バイアグラは心臓に悪いのか？

しかし発売から20年以上が経った現在、誤解は徐々に解消されつつあります。実際、バイアグラを含むED治療薬は世界で広く使用され、日本でも非常に厳しい審査基準をクリアして承認され、長年にわたって処方され続けています。後発品（ジェネリック）も登場し、より多くの人が利用しています。

本当に危険な薬であれば、20年以上にわたり世界中で広く普及し続けることはありえません。
また、日本のように医薬品承認が厳格な国で、これほど長く処方され続けることもありません。

なお、バイアグラ以外のED治療薬にも併用禁忌薬は存在します。以下にバイアグラ・レビトラ・シアリスの禁忌薬情報をまとめていますので、服用前に必ずご確認ください。

• バイアグラの併用禁忌薬
• レビトラの併用禁忌薬
• シアリスの併用禁忌薬