慢性腎臓病とED
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浜松町第一クリニック 竹越昭彦院長 監修
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慢性腎臓病とは、メタボリックシンドロームや糖尿病、高血圧、高脂質症、感染症、加齢、尿管結石、非ステロイド性消炎鎮痛薬などが原因で、数ヶ月から数年かけて徐々に腎臓が障害され機能が低下していく病態です。腎障害が進行すると、腎臓の機能の大半が失われた末期腎不全へと進み、体内から老廃物が排泄できず尿毒症が起こるため、腎移植や透析が必要となってきます。
診断基準
慢性腎臓病(CKD)は、以下のいずれか、または両方が3ヵ月を超えて持続することで診断される
- 1、尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか、特に0.15g/gCr以上の蛋白病(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要である
- 2、GFR(糸球体ろ過量)が毎分60ml/1.73㎡未満である
国内患者数
日本における慢性腎臓病(CKD)患者数は2005年では1,300万人(成人8人に1人)、2014年~2015年では1,480万人と推計され増加傾向にあります。これまでは健康診断のデータを基に計算されていましたが、健康診断を受けていない人も含めた患者数も合わせると、2024年時点で約2,000万人(成人5人に1人)と推計されています。
また、透析を行っている患者数は、2022年末時点で35万人とされています。
慢性腎臓病は、基本的な完治は難しく、進行の抑制のための治療や失われた機能を補う透析療法などを続けていくのが一般的です。
参照元 ⇒ CKD診療ガイド2024|日本腎臓学会
慢性腎臓病を発症するリスク因子としては、メタボリックシンドロームや糖尿病、高血圧、高脂質症、感染症、加齢、尿管結石、非ステロイド性消炎鎮痛薬などが挙げられます。中でも、末期腎不全に進行する3大原因は、糖尿病腎症、加齢や高血圧による腎硬化症、慢性糸球体腎炎、となっています。
透析を導入する原因は、2021年のデータでは、糖尿病性腎症40.2%、腎硬化症18.2%、慢性糸球体腎炎14.2%となっています。
参照元 ⇒ CKD診療ガイド2024|日本腎臓学会編
慢性腎臓病の発症には、上記からも分かるように代謝系疾患が大きく関わっています。また病態として認められるタンパク尿や、アルブミン尿は、冠動脈疾患や心不全などのリスク因子ともなります。糖尿病や高血圧、高脂質症などを治療していくことが、慢性腎臓病、そして心疾患を予防することになります。
CKD の重症度は、推算糸球体ろ過量(eGFR。糸球体で1分間にろ過される血液量)と蛋白尿やアルブミン尿の程度によって分類されます。eGFRの区分は以下のようになっており、 G 3 b 以下の場合には CKD に関する様々なリスクが急上昇するため、G 3 a のステージに入った頃から、早期に十分な食事療法や薬による治療を開始することが重要です。
eGFR 区分 ( ml/分/1.73㎡)
G 1 ( 90 以上 ) 正常
G 2 ( 60 ~ 89 ) 軽度低下
G 3 a ( 45 ~ 59 ) 軽度低下 ~ 中程度低下
G 3 b ( 30 ~ 44 ) 中程度 ~高度低下
G 4 ( 15 ~29 ) 高度低下
G 5 ( 15 未満 ) 末期腎不全
一般的に症状が現れ始めるのは、eGFR が毎分50 mL未満になったころです。初期症状としては、尿の濃縮低下による夜間多尿や、腎性貧血にともなう動悸や息切れ、全身倦怠感、疲労感などが代表的です。その後、むくみ、高血圧、高リン血症、低カルシウム血症、高カリウム血症といった電解質の異常が加わり、溢水、心不全などへと進行していきます。
また、不眠症やイライラ感なども出現し、やがて意識障害や不整脈につながり、命の危険に及びますので注意が必要です。
慢性腎不全の診断は、腎障害を示唆する所見と、eGFR の数値でおこなわれます。具体的には、血尿やタンパク尿の有無を調べる尿検査、腎臓の形態を調べる腹部超音波や CT 、採血検査などを行います。タンパク尿が1日0.5g以上継続する場合は、腎生検において腎障害の原因を調べます。原因疾患の診断がつくと、それに合わせた治療を開始します。
慢性腎臓病そのものを治癒させる方法は基本的にありません。病状の進行や合併症を予防するための食事療法や薬物療法、そして透析や腎移植などの腎代償療法が中心となります。
食事療法
基本は低タンパク・高カロリー食です。これに加えて、必要に応じてカリウムや水分・塩分の摂取制限をおこないます。水分の目安は「前日の尿量+0.5L」ですが、尿量が減少していない場合は、水分制限はむしろ逆効果になるため、おこないません。同じくカリウムも、血清カリウム値を参照しながら、適宜おこないます。
高カロリーにする必要があるのは、エネルギー不足によるタンパク質の分解を避けるためです。
薬物療法
症状や原因に応じて、適宜処方されます。尿量の減少が見られる場合には利尿薬、高血圧には降圧薬、腎性貧血には鉄剤やエリスロポエチン(赤血球の産生促進)、骨に栄養が不足している場合は、活性化ビタミン D などが投与されます。
透析療法
食事療法と薬物療法でも、病状が進行し、末期腎不全となった場合には、腎代償療法が検討されます。おもに透析療法と腎移植の2種類があります。
透析療法には、血液透析と腹膜透析(CAPD)の2つがあります。血液透析は、血液の一部を体外に出して、循環させながら、透析膜(ダイアライザー)を介して透析液と血液との間で物質交換を行い、血液中の老廃物と余分な水分を取り除く方法です。
腹膜透析( CAPD )は、腹腔内に腹膜透析カテーテルを留置して、腹膜透析液を注入し、腹膜を介して水や老廃物を取り除く方法になります。在宅で24時間持続的に透析をすることが出来ることや、通院が月に1~2回程度と少ないことなどがメリットです。
腎移植
正常な腎臓をほかの人から提供してもらい、腎機能の回復を目指す方法です。
免疫抑制薬の開発、そして医学の進歩によって、現在では5年生着率(移植腎が5年間にわたって生着し、機能している割合)は約95パーセントとなっています。透析療法と比較しても、生命予後が非常に良いのが特徴です。
慢性腎不全の方でも、バイアグラなどのED治療薬の服用が可能ですが、慢性腎不全などによって腎臓の機能が低下していると、血液中に有効成分が留まりやすくなり、ED薬の作用が強く出たり、作用時間が長くなることがあります。
慢性腎不全と診断され腎機能が低下している場合には、ED治療薬の効果の強さや顔のほてりや頭痛などの副作用がないかなども十分に観察する必要があります。
服用量については、医師と十分に相談をしましょう。
透析を受けている方
透析を行っている患者様では、バイアグラとシアリスにつきましては、服用可能ですが、レビトラ錠の服用してはいけない(禁忌)となっております。バイアグラ、シアリスを服用する場合にも、薬の効果が強く出ることが考えられますので、服用量は、主治医やED治療専門医と十分に相談しましょう。
腎移植をされた方
腎移植をされた方でも、移植された腎臓が正常に機能している場合では、ED治療薬の服用は禁忌になっておりません。薬を服用して問題ないか、主治医や当院医師にご確認ください。