4社合同による偽造ED治療薬調査2016年

浜松町第一クリニック 竹越昭彦院長 監修

2008~2009年に行われた、大手製薬メーカー4社(※)合同による偽造ED治療薬調査。この時には、インターネットで流通しているED治療薬の半数以上が、偽造医薬品であることが明らかになりました。

偽造医薬品の輸入差し止め、または販売活動の摘発にあたる警察への協力など、不認可・未承認薬品の撲滅活動が、大手製薬メーカーを中心にこれまで積極的に行われてきました。当時の調査は、被害実態の周知に貢献しています。


しかし、偽造品の国内流通には、未だ歯止めがかからない状況が継続しています。ED治療薬にかかわらず、関税で差し止められる偽造医薬品の数は増すばかり。健康被害と経済被害も、残念ながら続いています。そこで2016年、偽造ED治療薬の詳しい実態の把握に努めるとともに、注意喚起を徹底する意味も含め、追跡調査が行われました。

※ファイザー株式会社、バイエル薬品株式会社、日本新薬株式会社、日本イーライリリー株式会社の4社

調査方法

今回行われた調査は前回同様、日本とタイの調査会社へED治療薬(バイアグラ・レビトラ・シアリス)を、実質的に販売する個人輸入代行業者のサイトより購入。鑑定と成分分析を実施しました。なお、調査期間は2016年3月~2016年8月。取得数の目標は以下です。

ブランド日本タイ
バイアグラ1サンプル×15サイト1サンプル×15サイト
レビトラ1サンプル×15サイト1サンプル×15サイト
シアリス1サンプル×15サイト1サンプル×15サイト
合計45サンプル45サンプル ※

※未着があった経緯もあり、タイでの実際のサンプル数は25サンプルになりました。なお、各ブランドのサンプル数については公表されていません

国内では海外製の偽ED薬も大量に出回っていますが、中でもタイにおけるED薬の偽造、またはこれに日本人が関与するケースが目立ちます。購入する場所や輸入相手に、タイが選ばれる事例も多いことから、調査対象に同国が選定されました。

調査結果

調査の結果、国内外を合わせた発注分の合計で約4割が偽造品と鑑定されました。内訳等について、表にまとめます。

日本タイ合計
真正品64.4%(29/45)52.0%(13/25)60.0%(42/70)
偽造品35.6%(16/45)48.0%(12/25)40.0%(28/70)

ちなみに、前回2009年の調査では、国内発注分の偽造品は全体の43.6%。タイ国内の発注分は67.8%という結果でした。前回と比べて流通の割合は減少に転じているものの、依然として偽造ED治療薬による健康被害や経済被害が後を絶たないことから、継続的に情報の周知徹底と注意喚起を行う必要を各社が訴えています。

偽造品の特徴

偽造品には、効果のない偽物を購入したという経済的損害のみならず、健康被害のリスクも含まれています。今回の鑑定結果では、国内で承認されていない用量のバイアグラやレビトラなどが多数確認されました。また、表示されている含有量と、実際の成分量が一致しない非正規品の流通が多いことも分かっています。ネット上の偽造品を服用して体の変調を訴える声も多数報告されており、その危険性を周知徹底する必要があります。

ED治療薬の正しい知識

現状、国内で承認されているED治療薬はバイアグラ、レビトラ、シアリスの先発品と、後発品であるジェネリック医薬品(バイアグラ)のみです。偽造品の多くは外見が非常に似ており「本物」「海外製ジェネリック」といった文言で販売されています。以下で、正規品の概要・特徴をまとめます。

ブランド概要

バイアグラ

世界で初めて製品化されたED治療薬です。製造・販売元はファイザー株式会社。1999年から、国内での販売がスタートしました。菱形で青色のデザインが特徴。国内で流通できるバイアグラの規格は「25㎎」と「50㎎」の2種類のみです。100㎎のバイアグラは国内未承認で、300㎎の正規品は国内外問わず、存在しません。

レビトラ

ED治療薬としては、バイアグラの2番手として登場しました。製造・販売はドイツに本社のあるバイエル薬品。国内では2004年に販売がスタート。円形タイプで、オレンジ色のデザインが特徴です。現在、「5㎎」「10㎎」「20㎎」の3種類が承認され、国内で販売されています。カプセル錠、100㎎の正規品は国内外問わず、存在しません。

シアリス

製造は日本イーライリリー株式会社、販売は日本新薬株式会社です。2007年から製造販売がスタートし、「5㎎」「10㎎」「20㎎」の3タイプが国内市場で流通しています。黄色い卵形のデザインが特徴。2013年8月にはED治療薬市場で世界シェア42%を獲得するなど、人気の高い製品としても知られます。「50㎎」「100㎎」の正規品は国内外問わず、存在しません。

偽造医療薬に注意

2015年に国内の税関で確認された偽造医薬品は、1,030件。2005年にはわずか11件だったのが、この10年間で1000倍にまで急増しています。その多くがED治療薬と報告されており、医薬品購入のネット利用は便利な反面、リスクもはらんでいることを強く認識すべきです。


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