副作用でED
副作用でED

テーマ薬剤性 ED【薬剤性勃起不全】

薬剤性 ED とは

普段から常用している薬の副作用が原因で起きてしまう ED のことを、薬剤性 ED と呼びます。特に、20代の若い世代で精神安定剤や抗うつ薬・睡眠薬・向精神薬を服用している方が ED の症状を訴えている場合や、降圧剤や高脂血症治療薬、胃潰瘍治療薬などを長期に服用している方は薬剤性 ED を疑うようにしています。

素人目ではなかなかわからないことですから、気になる症状が現れたら、クリニックで問診を受けてみることがおススメです!

特に注意が必要なのは、薬剤性 ED のことを知らずに、今ある ED の症状を『年をとったせいだ』と勝手に判断したり、うつ病の方が『ED も心の病』だと思い込んで更に病状を悪化させる可能性があるという点です。

以下では、ED を引き起こしやすい薬を種類別に、ご説明します。


降圧剤による ED

降圧剤とED治療薬

高血圧の治療に使われる降圧剤の中には、ED の副作用がみられる薬があります。
もともと高血圧の方では動脈硬化を起こしやすいため、ED のハイリスク群とされていますが、降圧剤を使用している場合は薬剤性 ED の可能性も考慮する必要があるでしょう。

たとえば降圧利尿薬のサイアザイド系「ヒドロクロロチアジド」や、カルシウム拮抗薬「ニフェジピン」、中枢作用性交感神経抑制薬「メチルドパ、クロニジン」、β ブロッカー「アテノロール、プロプラノロール」などでは、薬の副作用で ED の症状が起る可能性があります。その中でも、利尿薬か β ブロッカーを服用している方の方が、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE 阻害剤)、アンジオテンシンU受容体拮抗薬(ARB)を服用している方よりかも ED 有病率が高いという研究結果があります。

またアンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンU受容体拮抗薬では性活動や勃起機能において保護的に働くという研究結果もあります。しかし、この2薬剤にて ED 症状が出たという報告もあり、はっきりと結論が出ていません。
降圧剤を服用している高血圧の方と降圧剤を服用していない高血圧の方では、降圧剤を服用している方が、優位に ED 率が高いという358名の研究結果があり¹⁾、降圧剤が勃起に与える影響は少なからずありそうです。

降圧剤が ED を引き起こすメカニズムについては、まだ明らかにされていませんが、動脈硬化がある場合での血圧の低下は性器への血流量を低下させ、ED のリスクファクターとなることが一つの要因として挙げられます。
だからといって、降圧剤を服用せずに、血圧が高い状態に放置することは、血管壁を傷つけ動脈硬化を進行させることになります。

降圧剤による ED 症状がある場合には、バイアグラなどの PDE5 阻害薬で高い有効性があります。ED 治療薬と一般的な降圧剤との併用については、問題は報告されていませんのでご安心下さい。

参考文献:
1) Doumas M,Tsakiris A,Douma S,Grigorakis A,Papadopoulos A,Hounta A,Tsiodras S,Dimitriou D,Giamarellou H. Factors affecting the increased prevalence of erectile dysfunction in Greek hypertensive compared with normotensive subjects. J Androl 2006;27:469-477

精神安定剤・抗うつ薬・向精神薬による ED

抗うつ剤や安定剤、睡眠薬、向精神薬などを服用している場合には、薬剤性 ED の可能性が十分にあります。

一般的に、うつ状態にある場合には、うつ症状のために性行為をしたいと思うことも少なくなり、薬の副作用で ED になっていてもそのことに気が付きにくいことがあります。しかし、うつ状態が安定してきた場合や躁状態となった場合に性行為をしようとした際に、うまく勃起出来ず、ED 症状が出ていることでご相談に来られる方が多くいらっしゃいます。そして、当院での問診で、初めて服用していた薬の副作用が原因で ED になっていることに初めて気が付くケースも多いのです。

注意が必要なのは、抗うつ薬・向精神薬の中には、添付文書にも副作用として ED があることが明記されていないことがあります。そのため、精神科又は心療内科にて処方を受ける際に薬の副作用として ED があることを主治医から伝えてもらっていないケースも見受けられます。

抗うつ薬の副作用による性機能障害は、特に三環系抗うつ薬「イミプラミン」、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)「パロキセチン」、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)「ミルナシプラン」などで報告がされています。
抗うつ薬が性機能障害を引き起こす理由としては、セロトニン濃度の増加が挙げられます。うつ病ではセロトニンが不足している状態の場合が多く、神経節中にセロトニンの量が多くなるようにする薬がよく使われますが、セロトニンはドパミンやノルアドレナリン系の神経を抑制するため、性機能を抑える働きもあります。
また末梢神経系におけるセロトニンの上昇は、感覚を低下させるため、オーガズムや射精の遅延、ED などにつながることも指摘されています。

その他、精神安定剤や向精神薬の中には、性欲の低下や ED を引き起こす「高プロラクチン血症」になりやすい薬もあります。特に、ドパミンD2受容体を遮断する作用をもつ薬では、性機能障害は重大な副作用の1つに数えられています。

このような場合でも、バイアグラなどの PDE5 阻害薬は有効です。十分効果が得られない場合などでは、容量や薬の種類を検討しますので、再度ご相談頂ければと思います。
またバイアグラをはじめとする PDE5 阻害薬は、性機能を回復することによって、うつ状態にも良い影響を及ぼすことが報告されています。

抗うつ薬の中では、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)に分類される「ミルタザピン」が ED の副作用が比較的少ないという報告があります。詳しくは抗うつ剤の種類と ED をご確認ください。

抗うつ剤の種類と ED
詳しくは抗うつ剤の種類と ED をご確認ください。

※休薬や薬の変更、服用量の変更などは、うつ状態などを急激に悪化させ危険な状態となる場合がありますので、自己判断はせず必ず主治医にご相談ください。


男性ホルモン抑制剤・抗アンド口ゲン剤による ED

男性の性欲や勃起機能に大きな影響を与えているホルモンが、テストステロンです。この分泌を抑える薬では、副作用として ED が表れることがあります。

たとえば、前立腺がんの治療でおこなわれる「アンドロゲン除去療法(ADT)」などは、LH-RH アゴニストなどの男性ホルモン抑制剤を用いるため、ED や性欲低下がみられます。治療中に血清テストステロン値をはかると、去勢レベルの低下を示すことから、性機能は明らかに下がることが分かっています。
ただし、男性ホルモンが低下することで、性欲もいっしょに低下することが多いため、性行為をする機会がなく、ED 自体を苦痛と感じない方も少なくありません。
薬の投与を中止すれば、テストステロン値は徐々に回復しますが、高齢者ではそのスピードが遅いこと、また治療前のレベルまでは回復しないケースがあることも報告されています。


どのような薬が薬剤性 ED になりやすいのか?

これについては日本性機能学会が監修を務める【ED 診療ガイドライン】に「ED を引き起こす可能性のある薬剤」として掲載されています。

降圧剤
サイアザイド系利尿剤・ループ利尿剤・K 保持性利尿剤・中枢交感神経抑制剤・末梢性交感神経抑制剤・血管拡張剤・α 遮断剤・αβ 遮断剤・β 遮断剤・Ca 拮抗剤・ACE 阻害剤・アンジオテンシン受容体拮抗剤
抗うつ剤
三環系抗うつ剤・SSRI・SNRI
抗精神病剤
フェノチアジン系
抗てんかん剤
イミノスチルベン系
睡眠剤
パルピツール酸系
抗潰瘍剤
H2 受容体拮抗剤・抗ドパミン剤
抗男性ホルモン剤
抗アンドロゲン剤・LH-RH アナログ
脂質異常症治療剤
スタチン系・フィブラート系

薬剤性 ED は、薬の中止や減量、もしくは他剤への変更などによって改善される可能性が高い ED でもあります。医療現場でも、薬剤性 ED への対応について従来よりも力を入れていますので、気になる症状がある人はぜひ一度主治医や当院の ED 専門医に相談してみましょう。

※自己判断で服用量を変更したり、服用するのを止めるのは大変危険です。必ず主治医にご相談ください。


QOL の維持のために

持病の治療で服用する薬は、風邪薬などと異なり、長期間の使用となることが一般的です。そのため、常用薬の副作用によって性行為がうまくいかないなど QOL(生活の質)が低下している場合には、ずっと続くことですので、我慢するのではなくよく考慮する必要があります。

薬の副作用を十分に確認し、医師と話し合うことが大切です。

その他、薬によって引き起こされる性機能障害は、男性の ED のみならず、女性でもオーガズムを感じにくくなるなどの症状が考えられます。しかし日本では海外と比べて、性機能について専門で治療している医療機関が少なく、また医師に相談する割合も少ないといわれます。
常用薬は、主治医とよく相談をして、その効果や副作用も十分に理解しておきましょう。