うつ病とED(勃起不全)の関係について

浜松町第一クリニック 竹越昭彦院長 監修

うつ病や双極性障害(うつ状態と躁状態を繰り返す)などの気分障害の患者数は2002年の厚生労働省の推計で約71万人、2011年には約96万人、2017年には約128万人と大幅に増加してきています。さらに医師の治療を受けていない潜在的な方を含めるとこれよりかなり大きな数字になると考えられます。
参照 こころの病気の患者数の状況|厚生労働省

EDとうつ病は、双方向に関連しあっています。
EDには大まかに分けて、身体的な機能不全からくる器質性EDと、メンタルに起因する心因性ED、器質性EDと心因性EDの混合性ED、そしていくつか特定の薬によって引き起こされる薬剤性EDがありますが、うつ病の場合は、そのいずれの可能性もあることが分かっています。

うつ病とEDの関連性は、1970年代後半ごろから指摘されていました。1990年代後半には、ED患者ではうつの有病率が、非ED患者と比べて2.6倍であるとの報告もされていますが実際に、うつ病有病者とそうでない人でED合併率に違いがあるのか当院にてアンケート調査を実施しました。

うつ病の有無別ED合併率

今回の調査にて、うつ病と診断されている人は、うつ病では無い人に比べて中等度以上のED合併率が約1.7倍(うつ病:25.76%、うつ病ではない:15.53%)であることがわかりました。

集計期間:2021年5月7日~9日
調査方法:インターネット集計
調査対象:日本全国の40~59歳の男性 合計2,000人(5歳階級ごとに500人)
  • EDではない:毎回、性交に十分な勃起を得ることができて維持することもできる
  • 軽度ED:たいていの場合、性交に十分な勃起を得ることができて維持することもできる
  • 中等度ED:時々、性交に十分な勃起を得ることができて維持することもできる
  • 重度ED:毎回、性交に十分な勃起が得られない。また、維持もできない
  EDではない 軽度ED 中等度ED 重度ED 合計
うつ病と
診断されている
66 (50.0%) 32 (24.2%) 20 (15.2%) 14 (10.6%) 132 (100%)
過去にうつ病と
診断されたことがある
96 (54.9%) 44 (25.1%) 22 (12.6%) 13 (7.4%) 175 (100%)
うつ病ではない 1,098 (64.9%) 332 (19.6%) 188 (11.1%) 75 (4.4%) 1,693 (100%)

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うつ病では、その名のとおり憂鬱な気分になり、何事にも意欲がわかなくなります。意欲の減退はそのまま性欲減退にも繋がり、EDにつながることがあります。心因性EDの代表的な症状といえるでしょう。加齢や病気などによる動脈硬化が進行していない若年層でも見られ、EDの原因となる器質的な原因が見つからない場合があります。

勃起は、性的な興奮が脳から陰茎に伝えられることで起こりますが、うつ病などで性的刺激を脳が十分に感じない場合、脳からの性的刺激が伝わらず性器海綿体動脈が拡張せず、勃起に至りません。多くのうつ病の場合でも、バイアグラをはじめとする PDE5 阻害薬は、血管拡張作用により血流が増加し、効果が出ることが多いです。しかし、強い抑うつ気分を認める場合や次のように特定の向精神薬などを服用している場合には効果が十分にでないこともあります。

日々の診療において、精神科やメンタルクリニックに通院されている方が当院を受診することは特に珍しい事ではありません。とは言っても、先ほど書いた通り、重症の方が来院されるというケースは稀で、少なくとも当院受診時にはある程度、うつ病のコントロールがついた状態での来院という方が多いと思います。個人的な意見ですが、抑うつ気分がかなり強い場合ですと、なかなかEDの症状にまで気が回らないことがほとんどなのではないかなと考えています。多少なりともEDの事を気に掛けることが出来るようになっているのは、それはそれである程度精神症状が落ち着いて来ているからなのだろうと思います。

うつ病の治療に用いられる抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬、抗精神病薬など、うつ病の治療に用いられる薬の中には、性機能を悪化させるものがあります。現在、抗うつ薬として最も良く使用されている SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、中枢神経系でセロトニンを増加させることで、性的衝動に関わるドーパミンの作用を抑制することが知られています。またいくつかの SSRI では、射精を抑制する作用があることも分かっています。これを逆に利用して、早漏の治療に SSRI を応用するケースもあります。

従来までは、抗うつ剤を服用している方のED治療は困難とされていましたが、PDE5 阻害薬が認可されてからは、事情が大きく変化しました。SSRI を内服している方でも、PDE5 阻害薬の有効性が認められたためです。ただし、内服している向精神薬の種類によっては、PDE5 阻害薬の効果を低下させることもあるため、併用薬については慎重に検討すべきです。

向精神薬によるEDは、簡単に考えれば内服を中止すれば済む問題ではあるのですが、なぜその内服薬を服用しているのか、といったポイントにも注意しなくてはなりません。当然、何かしらの症状を自覚し、病院を受診し、薬を処方されている、といった流れだと思います。ですので、現在服用している薬には、何かしらの必要性があって内服しているのだと考えるべきだと思います。この部分との兼ね合いで、考えるべきだという事です。

受診される方の中には、確かにEDを引き起こしうる薬剤を内服されている方もいらっしゃいます。そういった場合、『薬の調整は必ず、薬を処方してもらっている病院で行いましょう』とお伝えしています。自己判断で勝手に内服薬の調整したり、中断することは、多くの場合において良い結果を生まないからです。EDの事を相談しにくい場合には『体調が良いので薬を少しずつ減らしていく事は可能でしょうか?』といった形で、主治医の先生に聞いてみるのが良いかと思います。

男性ホルモンの一種である、テストステロンの分泌量が低下することによって、さまざまな症状をきたすことを「テストステロン減少症(低下症)」や「性腺機能低下症」と呼びます。うつ病やストレスによって若年層に起こることもありますが、仕事などでストレスの多い40代を過ぎて起こる男性更年期障害と呼ばれる LOH 症候群(加齢性性腺機能低下症候群)では、加齢やストレスによって男性ホルモンであるテストステロンなどのアンドロゲンが低下することでうつ病を引き起こします。そのうつ病がさらにアンドロゲンの低下させるという悪循環ともなり、このうつ病と男性ホルモンの低下は、EDの症状を誘発すると考えられます。年齢とともに男性ホルモンがある程度低下していくのは自然の流れではあるのですが、それが標準以上に下がった状態ですと、こういった症状を自覚すると考えられています。

バイアグラなどのED治療薬と、うつ病の薬で飲み合わせの悪い薬はありません。抑うつ症状の度合にもよりますが、バイアグラなどの PDE5 阻害薬の有効性が高いため、効果判定に一度服用してみるとよいでしょう。多くの場合で効果が期待出来ますが、効果がない場合には、服用している抗うつ剤の種類の見直しや強い抑うつ症状がある場合には、心療内科で主治医の先生に相談をする必要があります。

うつ病の種類と特徴

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